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太極武藝館脱力を考える


基礎知識脱力編

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仕事と力学的エネルギー


   日常生活では「仕事」というと、会社に行って働いて・・・などといった意味で
   使われますが、物理学においては、

    物体にチカラを加えてその物体が移動したとき、
    このチカラは、物体に対して仕事をした。

                    ・・・と、いうことになります。

   だから、壁を力いっぱい押しても、その壁が動かなければ、物理的には仕事を
   したということにはなりません。しかし、机の上においてあるコップを指で
   押したときにはコップが実際に動くので、仕事をしたということになります。

   ここで、物体に一定の力 F を加えて、物体が距離 sだけ 移動したとき、
   力 F がした仕事は、

W = Fs ……(6)

   と、表すことができ、(後述しますが)物体のエネルギーの変化は物体に
   された仕事によって決まります。


     


   次に力学的エネルギーについてですが、
    力学的エネルギーとは、物体に作用できる能力のことです。

   こう言うと難しく聞こえますが、実はとても簡単なことです。

   例えば、「金槌」について考えてみましょう。
   釘を壁に打ち込むためには、釘に金槌を勢いよく打ち付けなければなりません。
   動いている金槌は、釘を打ち込む仕事をする能力を持っています。
   このとき、「この物体はエネルギーを持っている」と表現されるのです。

   この力学的エネルギーの中には、「運動エネルギー」や「位置エネルギー」
   などがあり、さまざまな形となって蓄えられています。
   次にそれについてお話しをしましょう。



運動エネルギー


   先ほどの「金槌」のように、動いている物体に蓄えられているエネルギーのこと
   です。 重くて速い物体はたくさんのエネルギーを持っているといえます。

   ここで、質量 m 台車 A と、質量 M 物体 B が一体になって、速さ v
   直線運動しているときを考えます。

   物体 B 摩擦力 f を受けています。
   このとき、台車 A一定の力 F 物体 B に加え続け、距離 s だけ進み静止した
   とします。
   この現象によって、台車 A 物体 B にした仕事から台車 A がもともと持って
   いる運動エネルギーを求めることができます。
   (難しければ、読み飛ばしてもらってもかまいません。)

   作用・反作用の法則より、台車 A 物体 B から受ける力は −F であるので、
   台車 A加速度を a とすると(1)より


ma = −F ……(7)

                            となり、
   A は等加速度直線運動をするので、(5)より


0−v= 2as …… (8)

                            が成り立ち、
   (7)(8)より a を消去すると

1/2mv2= Fs …… (9) 

                            となり、
   この式の右辺は、 A が止まるまでに B にする仕事 W に等しくなります。

   よって、(9) は、 A の仕事をする能力が A質量 m と、最初の
   速度 v だけで決まり、その値が 1/2mv2 になるということを示してい
   ます。




    こうして、
       運動している物体が持つ「仕事をする能力」を、
       その物体の「運動エネルギー」
といいます。

    また、この式から、
       物体の運動エネルギーの変化が、
       その間に物体にされた仕事に等しい

                   (エネルギーの原理)

    ということをも分かります。



位置エネルギー


   ダムに蓄えられた水が大きな岩を押し流すことができるように、
   位置エネルギーとは、
    「物体が高い位置にあるとき、持っているエネルギーのこと」であり、
    「重くて高いところにあるものはエネルギーが高い」のです。

   質量 m の物体が高さ h P 地点から自由落下し、Q 地点での速さが v
   
になったとすると、(8)より、


v2−02=2gh ……(10)

          ( gは重力加速度といって自由落下させたときの加速度です。)

   この式の両辺にmをかけて、2で割ると

1/2mv2=mgh ……(11)


   このように、Q 地点では 1/2mv2=mgh に等しい運動エネルギーを得
   ていることがわかります。よって、P 地点にある物体は、Q 地点で静止し
   ている物体に比べ、仕事をする能力が mgh だけ大きいと考えることがで
   きます。





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