物理的に『蹴る』『踏む』を説明すると、
上記の(3)の動作が『蹴ること』であり、(5)の動作が『踏むこと』となります。
このことから、『蹴ること』、『踏むこと』を定義すると、
『蹴ること』…地面を押すことの反作用により、身体に鉛直上向きの加速度を生じさせ、鉛直上向きへの速度を増加させること。
『踏むこと』…地面を押すことの反作用により、身体に鉛直上向きの加速度を生じさせ、鉛直下向きへの速度を減少させること。
・・ということになります。
次に、『居着き』が生じてしまう歩行について説明していきます。
「立つ」ことからではなく、なぜ「歩行」から説明するのか、と思われるかもしれませんが、物理的に説明するには、静止している状態よりも、動き始めるときや動いている状態の方が容易なので、『歩行』から解析していこうと思います。
歩行は身体の運動を行う為には欠くことのできないものですが、普段はつい無意識に歩いてしまっている人が多いのではないでしょうか。
歩行というのは、「立脚期」と「遊脚期」が交互に繰り返される周期運動で、歩行を始める際には、まず体重を地面についている片方の足の下肢に移して支持し、同時に体側の下肢を挙上させ、その下肢を前方に振り出すという運動を繰り返しています。
このように、歩行では、左右各側の下肢は体重を支持する「立脚期」と前方に振り出す「遊脚期」とを交互に繰り返しています。
歩行はこのような周期運動で、片側の足の踵が地面につくときから、地面を離れ、再び地面につくときまでを一周期としています。
さて、この周期運動の中で『居着き』が生じてしまうわけですが、
一般的に、歩行には「静歩行」と「動歩行」の二種類があります。
「静歩行」では、重心の位置が常に支持脚の支持範囲内に存在しており、どちらの足が上がったとしても重心が変化して行く事がありません。つまり、「静歩行」においては、どのような歩行の状態に於いても、その姿勢のまま止まる事が出来ます。
それに対して、日常的な歩行においては、片足に乗っている時、その人の重心は支持脚の足裏の範囲内には保ってはいません。そのため、その人はその姿勢のまま止まる事は出来ません。
このことを「静的に不安定」というのですが、静的に不安定でいるにも関わらず、その人が安定した歩行を続けていられるのは、「動的効果」のためです。
この「動的効果」というのは、ある物体が加速や減速をするためにはそこに力がなければならない、ということから生じます。
例えば、綱渡りをするときに、右に倒れそうになったら左手を上に、右手を下方向に回転させて安定を保とうとするのは動的効果を利用しているからです。
このように、動的効果を利用する事によって安定させている歩行を「動歩行」といいます。
たとえば、人間においては身体を左右に振り、腕を振るという事によって「動的安定性」を保っています。
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