太極武藝館


太極武藝館居着きを科学する


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重心を低くした場合

<図8>


<図9>


 これは初心者に多く見られるのですが、腰相撲をする際、相手が押してくるのにどうしても耐えられない場合、重心を非常に低くして耐えている人がいます。
 この場合における力の分析をしてみると、<図2>とほとんど同じなのですが、違うところは後ろ足と重心を結んだ線の地面とのなす角が小さくなっています。
(今回は 'としています。)




 これはつまり、後ろ足を中心とした回転運動が起こりにくくなることを意味しているので、結果として、押されにくくなります。但しこの受け方では、身体操作を工夫しなくてもある程度までは相手が押してくるのに耐えられてしまうので、太極武藝館では全く用いられていません。



押される人が寄り掛かってしまう場合

<図10>


 これも初心者によく見られるもので、相手に寄り掛かることによって耐えようとしています。
しかし、このやり方ですと簡単に押されてしまいます。なぜなら、「押されないとは」のところで説明した力の分析では、相手の押しにくさは重心の位置が重要なのであって、身体が力んでいるか弛んでいるかということはほとんど関係がないのです。その為、寄り掛かると一見押しにくいように感じますが、重心の位置がほとんど変わっていないことに加えて、寄り掛かることによって関節が弛み、で説明したような関節が折れてしまうパターンによって簡単に押されてしまうのです。



押す人が上向きに力をかけた場合

<図11>


<図12>

 今度は押し方の問題です。相手を動かすことを重視するあまり、相手に対して持ち上げるような力を出す人がいます。
 この点に関しても力の分析をしてみたいと思います。


押す側の人が床に対してα(0°<α<90°)の角度で押し上げたと仮定すると、



sin(+α)は(+α)=90°になったときに一番大きくなるので、相手の重心と後ろ足を結んだ線に対して垂直に力を加えると一番相手を動かしやすいのです。だから、相手を動かそうとむきになると反射的に相手を持ち上げようとする力をかけるのです。



押される人が上向きに力をかけた場合

<図13>


<図14>


 この場合は、押す人だけでなく押される側が押す相手を上向きに力をかけた場合です。相撲で言うところの「相四つ」という形でしょうか。
 さて、このときの力の分析をしてみましょう。ほとんど<図2>で示したものと同じですが、一つ違うところは点P(押される人の手の部分)から押す人を上に押す力の反作用F'がかかっています。


このことによって、


 そのため、F'Lsinβが後ろ足を中心とした時計回りの力のモーメントとして発生していますね。
この力のモーメントによって「押される」の項で説明したの崩れ方がしにくくなります。
 この式から、後ろ足から相手を押す手を直線で結んだラインに対して、90°になるようにすると一番押されにくくなります。よく相撲で相手をつり上げているのはそのためですね。
 ですが、この耐え方だと、腕力に頼って身体操作をしなくても済むようになってしまいますので、太極武藝館では行われていません。


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