太極武藝館


太極武藝館の目的

  太極武藝館は、正式には、
「正宗 陳有本系陳氏太極拳學研究會 太極武藝館」と称し、
陳氏第17世・陳子明老師の流れを汲む外族伝人によって当館の館長である 円山 洋玄師父(shi-fu・師範、老師の意)に伝えられた陳氏太極拳理論と、実戦性の高い伝統武術としての学習体系をもとに、武藝、すなわち「武功の藝術」としての太極拳を後世に正しく伝承するための拳理拳学の整理保存と、その研究、研鑽を行なうことを目的としている団体です。

 師祖、陳氏第14世・陳有本老師は、それまでの陳氏太極拳に柔法や内勁など独自の工夫を加えて、小架式という新しい太極拳の套路と練功法を創造しました。
 三代を経た陳氏17世・陳子明老師は、初めは父の復元に陳氏太極拳を学び、その後、に就いて学びました。

また、陳子明老師の父、復元は、に新架式を学んだほか、陳耕雲に大架式と新架式を、陳清萍には趙堡架式を学んでいます。
 つまり陳子明老師は、大架式、新架式、小架式、趙堡架式という、現存する陳氏太極拳の殆どの架式を総合的に学んだ、非常に稀な伝人であるということが分り、正に陳氏太極拳の精髄と言うべき功夫を身に付けていたことが想像されます。
 したがって、そのような意味に於いても、私たちが陳子明老師の一枝所伝の系統を守りつつ、研究研鑽を続ける意義は、非常に大きいものであると考えます。

 事実、太極武藝館で教授される陳氏太極拳には、本場の中国や台湾でも失伝の危機に瀕している高級武術としての太極拳の高度な理論や練功法が、今も脈々と息づいています。
 ここでは、現代の太極拳が遠く忘れ去ってしまった、「意(意識)」によって導かれる緻密な站椿功をはじめ、細密な歩法や身法、あるいは、表演套路からは想像もつかない、高い実戦性を持つ推手や散手の訓練法、あるいはまた、高度な武術理論に裏付けられた「十三勢小架」の多彩な段階訓練などが、個人の目的やレベルに応じて指導されています。
 ここで学ぶ者は皆、本物の太極拳がどのように修練され、それが如何に武術として高度であり、実戦的に優れたものであるかをトータルに味わうことができ、そしてそれを自分自身の功夫として身につけていくことができるのです。

 また、よくあるご質問に、
『太極武藝館の「藝」の字は、「芸」ではなく、何故わざわざ「難しい字」を使っているのか?』
というものがありますので、この場を借りて説明させて頂きます。
 まず、「藝」という字は、「難しい字」や「昔の字」ではなく、正字、つまり「正しい字」です。
「芸」は今日では「藝」の新字体として一般的に使われるようになっていますが、
もともと「藝(yi)」という文字と「芸(yun:元の字は草冠に雲)」は異なる字なのです。
 「藝」の字は、よく知られるとおり、藝術、技術、藝能、育てることなどの意味がありますが、
この字は「クサカンムリ」に「陸」と「丸=手にものを持った形」と「云=雲」で構成されており、
【 雲が天に湧きあがっている所で、手に種を持って地に蒔く 】 という意味を表しています。

 つまり、「太極武藝館」という名称には、
  『太極拳という武術を通じて、作物を育てるように人間を育て、成長させるところ』
という、創始者・円山洋玄老師の願いが込められているのです。

 略字として使われている「芸」という文字は、本の虫除けに用いた「芸香(yun-xiang)」というミカン科の香草のことを指しており、それ以外には「芸豆(インゲン豆)」や、アブラナ科の野菜の名前などに用いられています。
 また、芸は「ゲイ」ではなく、正しくは「ウン」と読み、芸台(ウンダイ)とか、芸閣(ウンカク)などの熟語となって、「蔵書の部屋」、転じて「学問をするところ」や学者の「研究室」などの意味として使われ、新古今集には『これによりて延喜に芸閣の風かうはしく・・』などのように用いられています。

 以上が、太極武藝館が「藝」の文字を用いている理由です。


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