太極武藝館


太極武藝館の存在意義
陳家溝から黄河を4800キロ遡った上流に
位置する「炳霊寺」石窟遺跡

 円山洋玄師父に伝承された陳氏太極拳の拳理拳学は、実際に学んでみると、本来の太極拳とはどのようなものであるのかを強く実感させられ、特に武術修行の経験者であるほど、それは強烈なものとなるようです。
 その実感の一端は、門下生の声のページで、学ぶ者の生の声としてご覧頂くことが出来ます。

 この道場では、太極拳という優れた中国の伝統武術が、わずか半世紀ほどの国家の政策によって、スポーツ表演競技や健康運動としてその姿が変えられる以前の、武術としての長い歴史と文化の重さを持つ、武術性の高い太極拳が教授されており、ここで学ぶ者の誰もが、本来の太極拳の風格や、隠され続けてきた「武術」としての真の威力や戦闘力を正しく実感させられています。

 実際に、源流である陳氏を含むすべての太極拳は、この半世紀の間にすっかりスポーツ化され、云わば牙を抜かれた虎のように、その姿を変え果ててしまいました。


 中国本土に居住する太極拳の直系の子孫たちは、一族が守ってきた門派の伝承者というよりも、人民民主共和制を標榜する国家が認定する国家指導員としての色彩が強くなり、他の太極拳家も徐々に気功家やスポーツ講師のように変貌してきている感があります。

 そして、数千年の歴史を持つ伝統拳術は、国家の意向に従って編纂し直した「表演用の套路」を上手に演じるために存在するようになり、武術的な要素を抜き消された推手競技の中で優劣を競うことにその武術性が見出され、まるでそれらを目的とすることが伝統拳術を現代に存続させ得る唯一の道である、と信じられているかのように見えます。

 実際、太極拳の各門派は、中国武術が持つ本来の武術性を十全に知らぬ外国へ向けて、太極拳が優れた健康法であり、年齢や体力に合わせて出来る生涯スポーツであることや、まさかの時の護身法にもなることを強調し、世界中の人々にそれらを普及させることが、この時代にあっての「中国武術の意義」であると考えるようになり、「純粋な武術」としての高度な体系を持つ太極拳は、急速にその本来の姿を失いつつあります。

 その結果、世界中に広められた太極拳は非常に武術性が希薄なものとなり、中国拳術と言えば、少林拳や蟷螂拳、心意拳、意拳、南拳、八極拳などが実戦的として知られるようになり、太極拳はすっかり「昔は優れた武術であったと言われている健康運動」というイメージが定着した感があります。

 また、太極拳の国際的な普及にともなう知名度により、太極拳と名が付けばビジネスとして成立し易いことになり、太極拳以外の拳術を専門としている人たちの中には、太極拳の根本的な力の養成の仕方や正しい戦闘方法を無視して、彼らの母体である他門派の技法を巧みにそれに充てることで「古伝」や「秘奥」などと称して、商業的に展開しているものまで見受けられ、これによって太極拳の本来の姿がさらに歪められていることも否めません。

 また、特に日本では、例えば八極拳、蟷螂拳、劈掛拳などと太極拳を併せて教授したり、あるいは陳氏と楊氏を並行して教えたり、陳氏を教えている先生の推手が楊氏太極拳のものであったり、基礎となる拳理や戦闘理論を無視して、套路の基礎架をそのまま実戦用法として教授する、といったような道場や教室が無数に存在するという、何とも珍妙な現象が後を絶たず、その例は枚挙に暇がありません。

 太極武藝館では、現代太極拳のこのような状況に鑑み、古より続く純粋な「武術」としての太極拳の拳理拳学を後世に正しく残すために研究と研鑽を続け、武術を真摯に探求する者に、その高度な拳学内容を学ぶ機会を提供し、この優れた拳学内容を絶やさぬために、真伝を十全に修得することのできる後継者を育てることを以て、当館の目的と存在意義とするものです。

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