太極武藝館


順身と歩法の実験1

文責/太極武藝館編集部


元陸上選手との対決


 円山洋玄師父は、時折、遊び心たっぷりに、様々な武術的実験を私たちに示されるが、ここではそのひとつ、「順身(順体)歩法の実験」をご紹介しよう。

 これは、俊足自慢の門下生と道場内で10メートルダッシュを競うものであり、元陸上部の選手(32)と、もと極真会館の指導員(28)が師父の対戦相手になった。

 師父が、まるで壁を背にしたように、どうみても棒立ちの姿勢でヌーッと立っているのに対して、元陸上選手の小柄な女性(50メートルを6秒台で走る!)は、後ろ足を蹴りやすくするためにカカトに他の門人の足の甲を借りて当てがい、床に手をついたおなじみのスタイルで構える。
 かたや元実戦空手の指導員も、学生時代には陸上部を経験しており、その鍛えられた巨体で足を前後に開き、身を乗り出して、いつでも飛び出せる状態をとっている。

 この状況で、ヨーイ、ドン!、となるのだが、結果は驚くなかれ、棒立ちで号令を待っていた師父のほうが圧倒的に速く、その速さの違いは、全く比較の対象にならない。 
 いや、速い、などというものではない。何と師父は、ドン!の時にはすでに2メートルも先を走っており、一緒に走っている二人は、ダッシュする以前に、スッと前に出た師父の背中を見て「エエ〜ッ?!」っと、驚愕の声を上げてしまうのである。 

 これが何度も繰り返され、俊足自慢の弟子も飛び入りをして走るのだが、いくらやっても結果は同じ。まったく競争になっていないので、一緒に走った門下生は、驚きを通り越して笑ってしまっている。

 もちろん、師父はフライングはしていないし、いきなりダッシュをしている風でもない。多くの道場生が見守る中でこれをやっているのだから、見たままの光景を信じるしかないのだが、それにしても、あまりにも速さが違い過ぎる。例えて言えば、チーターとゾウ、アルファロメオと国産スポーツカー、F14戦闘機とジャンボ旅客機ぐらいの違いはある。

 師父は、かつてオーストラリアのシドニーで、オリンピックの陸上候補選手とも同じ実験をやったことがあるが、結果は全く同じで、その選手は何度やっても師父を追い越せなかった。
 余談ながら、かの選手はその後、オリンピック選手になることを全くあきらめ、来日して師父のもとに滞在し、弟子として本格的な修行に励むことになった。


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