太極武藝館


順身と歩法の実験3

              文責/太極武藝館編集部


チカラ自慢!腕相撲の横綱たちとの対決


 わが太極武藝館は、至高の武藝を追求する本格的な太極拳の道場であるが故か、まったく何の宣伝もしていないのに、他門派の空手、実戦空手の指導員、柔道、合気道、柔術の黒帯やウデ自慢、チカラ自慢たちが、風のウワサを聞き付けて入門して来る。

 彼らは、ここへ入門する前の道場では「猛者(モサ)」などと呼ばれたツワモノたちであり、中央の大会に出場し、得意の左フックは今だにかわされたことがありません、などと笑顔で豪語したり、ベンチプレスで140キロもあるバーベルをヒョイと持ち上げ、腕立て伏せを300回(!)、腹筋を800回(!)、スクワットなんぞは1000回(!)位は一度にサッサとこなし、ズウタイも90kgを超え、腕やモモの太さなんぞは、細身の女性のウエストくらいはユウにあるし、首の回りなどは大山倍逹先生が戦ったウシに匹敵するかのように見える!!

 あるいはまた、年齢は60才を過ぎ、身長も体重も小柄な、一見するとフツーの白髪混じりの初老の男性であるにも関わらず、その辺の交通標識を見ると、ついついポールを両手でつかんで、ヒョイと「鯉のぼり」のように身をたなびかせたくなる、他門派での太極拳歴30年(!)をアッサリと捨て、ここでイチから勉強し直す決心をされた人もおられるし、さらには、本場中国の大学へ留学中に中央国術館の老師から正統形意拳を学んだ、これまた腕相撲ではヒクソンも顔負けの400戦?不敗の戦歴を誇る、マッチョ空手マンもビビる、密かな腕自慢も居る。
 
 彼らは、概して性格は優しく温和であり、非常に礼儀正しいのであるが、ニコニコしながら「ええ、腕相撲では誰にも負けたことはありませんネ」とか、「腕相撲ですか?・・いやあ、ハハハ、僕は強いですヨ!」などと、白昼堂々とサラリと大言壮語してはばからないくらいお強く、実際、地域社会の中で多少の腕自慢だった程度の者は、実に他愛無く、開始の合図と同時にコロッとやられてしまうほどなのである。

 その彼らが、師父に腕相撲を挑んだ!
 師父の細腕?を見て、武術ではかなわないが、腕相撲なら勝てる!・・・
 と、ヒソカに彼らは思ったのであろうか?・・・

 だいたいにして、腕の太さが違う! 
 身体の大きさが違う!、筋肉の厚みが違う!
 武術の道場の指導者は、たとえゴジラやキングコングのような(失礼!)相手でも、門下生に挑まれて後ろを見せるわけにはいかないよなあ・・・


ウーン、太極武藝館のメンツもこれまでかッ!・・と、誰もがシリアスに想ったのもつかの間・・・

 師 父「(ニコニコして)ハイ、いつ
     でもいいですよ、思いっきり
     どうぞ」


 コング「うウ・・ググ・・・・」

 見る見るコングと呼ぶに相応しい門人の身体中の筋肉が膨らみ、
ギャラリーからはオオーッと歓声が上がる・・  

 師 父「え? もう始まってるの? そんじゃ、遠慮せずにもっと力を
     出し
ていいよ!」

 コング「う・・グ・・(顔を真っ赤にしながら)だ、出してるんス
     けど・・・」


 師 父「私がもう年だから(この時、満49歳)、手加減してくれてるの?」

 コング「じ、自分は若いですが
    (満28歳)そ、そんなことあり
     ません・・
     ホントにこれで、目一杯っス、
     ひ、100パーセントです・・」


 師 父「じゃ、いくよ、いい?」

次の一瞬・・

  「ゴロッ、ズッテーン、ズドォ
   〜ン!(地響きと共に少し道
   場が揺れる)」


 コングは台の上で身体ごと風車のように回転され、そのまま地面に転がって落ちていった・・・

見物、いや、見学中の門下生たち
         「すげぇえー!」





             「うっそぉー!」
                  「唖然・・!」


 師 父「ハハハ、ダメだったね。じゃ、こんどはハンディをつけようか。」

 師父は手の甲がほとんど着くほど台に近付けたところで構える。
 コングは、今度は負けじと、身体中の筋肉と鼻をふくらませ、先ほどにも増して足腰をガッチリと低く固め、世界大会の決勝戦かのように、マジの形相で師父に対する。


 審 判「レディー、ゴーッ!」

 コング「うッワアアッー!」

 あっという間に、さっきと同じように、瞬時に転がされる。

 師 父「どうですか、チカラじゃないでしょ」

 コング「信じられません・・・自分は思いっきりやっているのに・・」

 師 父「要するにね、これは順身(順体のこと)と歩法なんですよ。
     それが分かったら誰にでもデキルね(笑)。
     だいたい、私が君にチカラで勝てるわけがないでしょ!」

 コング「はあ・・・?」

 師父は常に、これらのことは、陳氏太極拳の站椿と歩法を正しく理解してさえいれば誰にでもできることであり、何も特別なことではない、と仰っている。
 なお、この腕相撲は、「立ったままで」「イスに座って」「寝て」「脚立に腰掛けて」など、様々なバリエーションで行われており、「寝て」行う腕相撲は、英語版のページ、
The Academy of Tai-Ji Martial Art Photo Gallery4 」に紹介されている。


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